「動物園って、そもそも何のためにあるんだろう?」と番組を見ながらふと立ち止まった方もいるかもしれません。今回チコちゃんが投げかけたこの問い、実は思っているよりも奥深い背景が隠れています。
「動物園はなぜつくられたのか?」というシンプルな疑問。その答えをたどると、人間と動物との関わりの変遷や社会の価値観の変化が見えてきます。特に注目したいのは、私たち人間が“檻の外”に立つという構図。当たり前すぎて意識しにくいけれど、そこにこそ、文明の視点や責任感、ちょっとした優越感までもが透けて見えるかもしれません。番組を通じてその背景をひもといてみると、普段とは違う視点が見えてきます。
動物園は何故?の歴史
見せることから始まった動物園の歴史
古代エジプトや中国では、珍しい動物を集めて王が誇示する文化があったそうです。これは今でいう“展示”というよりも、力の象徴みたいなもの。
ヨーロッパでも18世紀頃から「メナジェリー」と呼ばれる私的な動物コレクションがありましたが、ウィーンやロンドンではそれが次第に一般公開され、今の動物園の形に近づいていきます。
【動物園の文化史-ひとと動物の5000年-】
溝井 裕一著 勉誠出版 2014.4
古代(四世紀まで)~中世(五~一五世紀)までに存在した動物飼育施設を動物コレクション、近世ヨーロッパ(一六~一八世紀)に権威をアピールするためにつくられた飼育舎をメナジェリー、近現代(一九世紀以降)に(↓につづく)#読了 pic.twitter.com/fcK84ez0l7— あんず@読書 (@anzu_books) June 4, 2023
上野動物園ができたのは明治時代のこと
日本初の動物園、上野動物園が誕生したのは1882年。ウィーン万博などを通して海外文化が流れ込んだ時代、西洋風の施設として開園しました。
90年前の今日1935(昭和10)年1月17日、動物学者・石川千代松氏が逝去。モース氏の弟子で、進化論を日本に紹介、上野動物園の初代監督(園長)としてキリンなどを購入し紹介、琵琶湖での鮎の研究など多くの功績を残しました。
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— 『まちの記憶 ~風土アーカイブズ~』 編集部【公式】 (@itot_archives) January 17, 2025
当時は“見せる”ことに重点がありましたが、時代が進むとともに教育や保全という目的も加わり、動物園は少しずつ「意味のある場所」に変わっていったようです。
なぜつくられた?
娯楽から“学び”へ、そして“責任”へ
もともと動物園って、物珍しい動物を見るための場所でした。いわばレジャー施設。でも無柵式展示や生態展示の導入で、“動物の暮らし”に寄り添った視点が少しずつ育ってきたんですね。
最近では、動物福祉や生態系保全への配慮も求められるようになり、動物園に求められる役割は大きく変わってきました。たとえば、横浜市立金沢動物園では地域の自然と融合した展示が話題になっています。
展示の工夫に込められたメッセージ
ガラス越しの展示や、あえて動物が隠れられるスペースを設ける展示も増えてきています。見えづらいけれど、だからこそ「動物の本来の姿を尊重する」空気が伝わってきます。観察する人間も、ただの“お客さん”ではなく、「この世界の一員」として自然や動物に関わっていく視点を持つようになってきたのかもしれません。
ちなみに、東京都恩賜上野動物園のパンダ展示では、観覧者の行動制限と動物のストレス軽減を両立させた設計が評価されています。
チコちゃんに叱られる!「檻の外」テーマを考える?
“檻の外に立つ”ってどういう意味?
今回の『チコちゃんに叱られる!』では、「人間がなぜ檻の外に立っているのか?」というテーマが取り上げられました。安全のため、というのはもちろん。でもそれだけじゃなくて、動物との境界を明確にするため、という背景もあるようです。
自分たちは観察する側である、という無意識のメッセージがそこにあるようにも感じます。
ちょっと立ち止まりたくなる問いかけ
動物園に行ったとき、「私たちが見ているつもりが、見られているのはこっちかも…?」なんて思うことってありませんか?ブロンクス動物園では“世界で最も危険な動物”として鏡に人間を映す展示もあるそうで、なんだかドキッとしますよね。
森香澄さんも番組内で「逆に見られてる感じって、ちょっと不思議でした」とコメントしていました。
【まとめ】
「動物園はなぜつくられた?」という問いにまっすぐ向き合ってみると、ただの施設というより、人間と動物の“関係のかたち”を映し出す存在なんだなと気づかされます。
支配から共生へ、見世物から学びへ、そして私たちがどんな存在なのかを問う場としても。
檻の外に立つという“当たり前”の風景も、背景を知ればきっと違って見えてくるはずです。
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